怖い話特集
ある時、いつものようにトンネルで壁に耳を当てると、女の声だけが聞こえた。

すすり泣くような、高い声で細々と呟く声。

それはこんなことを言っていた。

子供のせいで幸せが崩れたこと、仕事を辞め友人が減り空虚な毎日、そして延々と男を呪う言葉を。

従姉妹は薄暗い台所で独りで呪詛を紡ぐ女の姿を想像し、寒気を覚えた。

その日を最後に、トンネルには二度と行かなかった。
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