怖い話特集
ひたすら『アケロ』と呟く声が聞こえた。

びっくりして離れようとしたが、耳が離れない。 

それどころか、さっきまで耳が感じていた 
金属の冷たさがいつの間にか消えていた。

次の瞬間、真っ黒の表面から赤黒く爛れた2本の腕が出てきて、彼の頭をわしづかみにした。

抵抗する暇もなく、小学生は真っ黒の金属板の中に引きずり込まれて、夢から覚めた。

夢から覚めた小学生には、もはや恐怖心などかけらもなかった。

ただただ、夢だけでなく現実の金属板も確認したい、その一心だった。

彼は既に、あの金属板に取り憑かれていた。

小学生には確信があった。

あの時はびくともしなかったが、今なら開けられる。

夢であけた自分だからこそ開けられる、そう信じて疑わなかった。


もはや夢など待たずともよい、すでに金属板以外のことなど考えられなくなっていた小学生は、親に黙って再び神社に向かった。

そして、小学生はそのまま行方不明になった。
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