逃がすもんか!
認めたくないものだな、年老いた故の、若さ故の過ちを指摘する姿勢というものを。
年下だから、社会を知らない。マナーも知らない。言葉遣いもなっていない。
そんなの当たり前なのに、それをネチネチと内心批判しているのは、年老いたせいだろうな。
できなくていいんだ。私だって19、20の頃はできていなかったし、もっと世間知らずな女の子だった気がする。それを棚に上げて、大人になろうと必死にもがいている未来ある若者の芽を潰そうとしているんだ。
そんな大人にだけはなりたくないと思っていた。でも、内心に秘めているものは、全てが実現できるもので、もしかしたら私ももう10年、いや早くて3年も経てば、そんな大人になってしまうのだろう。
2杯目には、ハイボールを注文した。佐田は生レモンサワーを注文した。5分後になって、ハイボールと生レモンサワーが運ばれてきたけど、店員は私に生レモンサワー、佐田にハイボールを置いた。
「あの、松野さん……でしたっけ?」
「はい、松野です。」
生レモンサワーを佐田に渡しながら答えた。
「松野さんは普段、どういうお仕事してるんですか?」
「経理。って言ってもわからないよね?」
「何となくしか。」
私は佐田の気持ちが少しわかったような気がした。