逃がすもんか!
「まあ、正直言うと、6500円は高かったかな……。」
「しょうがないんですよ。僕たち役者にはノルマがあって、65000円分、チケット枚数にして10枚売らなきゃいけないんです。で、売れなかった枚数は自分で買い取らなきゃいけなくて……。」
「その65000円はどこに消えるの?」
「劇場を借りたり、小道具や衣装、あとはスタッフさんのギャラに消えますね。劇場なんか1週間も借りたら100万とか普通にかかりますからね。」
なるほど……。そうやってお金を集めて、舞台をしているのか。
「とにかく、お疲れ様。今日は私が奢るから。」
「そんな……いいですよ!」
「いいの。」私はテーブルにクレジットカードを出した。
「役者でギャラがもらえるようになってから、何倍にもして返してくれたらそれでいいから。」