逃がすもんか!





佐田からの返信の頻度が減った。



元々、佐田は自分から連絡するようなタイプの男ではなかった。大抵は、私から連絡をして、それに対して佐田は何気ないような一言や、スタンプで済ませたりしていた。



「忙しいの?」



電話口で、佐田は「うん……。」と欠伸交じりに言った。



「最近、あんまり寝れてない。」



舞台稽古は、17:00から22:00と訊いていた。にもかかわらず、寝れていないということは、きっと学校の方も忙しいからなのだと思った。



佐田はバイトもする暇がないと言っていた。「じゃあ、どうやって生計を立てているの?」と訊くと、両親からの仕送りだと言う。



私も学生時代は、そんな感じだったし、イマドキの学生はそれが当たり前だと思う。むしろ、バイトをして家賃、光熱費、食費、ケータイ代、更には学費まで払っている学生の方が少ないし、そんなことは不可能じゃないかとさえ思う。



「ちゃんと食べて、ちゃんと寝ないとダメだよ?」



「うん……。」



佐田の元気のない返事が電話口から漏れる。私は無責任だ。「私が養うから安心して!」くらい言いたい。言えるようになりたい。でも、その気持ちは男である佐田の方が強いはずだ。



佐田のプライドにかけて、私から「養ってあげる!」なんてとても言えない。気持ちがあっても、言えない。




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