逃がすもんか!
逃がすもんか!
海に来た。
暗い、暗い、夜の海。
休日に佐田とも会わず、家でゴロゴロしてたらいつの間にか寝ちゃってて、夢を見た。
佐田を殺す夢だった。
怖かった。
夢から覚めて、自然と涙が出てきた。
つーっと脇汗みたいに流れた一筋の涙に気づくと、「オレも!」「私も!」とまるで意思を持っているかのように2つ、3つと流れて、溢れた。
溢れんばかりの涙を、Tシャツの袖で拭って、財布だけ持って、鍵もかけずに家を飛び出した。
大通りで止めたタクシーに乗り込み、運転手に泣き顔を見せないように窓外の、流れていく景色をただ、ただ、眺めていた。
そして、やってきた。大海原。辺りに灯りはない。真っ暗闇が音を立てて、私を呼び覚ます。