逃がすもんか!
佐田を殺した。夢の中とはいえ、殺してしまった。
佐田に言われた一言にムカついて、にんじんを切っていた包丁を彼の胸に押し当てて、その彼の身体から流れ出た温かいものが、私の手を汚した。
リアルな夢。でも、リアルじゃない、ただの夢。
そう言い聞かせて、私は靴を脱いで、靴下も脱いで、真っ暗闇に足を突っ込んだ。
冷たい。この冷たさは私の心をどこまでも、どこまでも凍らせていく。血を、肉を、そして涙さえも凍らせて、泣くことも、死ぬことさえも許してくれない身体になる。
思いたくなかった。考えたくなかった。でも、あの夢を見た瞬間、気づいてしまった。
私は、佐田を縛り付けている。