逃がすもんか!





もし、今ここで私が連絡して、それから会って話すことになったら……。



沈黙が気まずいから、「何か作るね?」と冷蔵庫を開けて、一人暮らしのくせに、料理なんてしないくせに、使いかけのじゃがいもとかにんじんとかたまねぎとか見つけて、悟って、でも言わないで。



トントンとにんじんを切っていると、佐田は言うのだ。



「オレ、本気で役者目指そうと思う。学校もきっぱりやめて、バイトしてさ。いつ売れるかわからない。それまで祥子さんを待たせるようなことはできない。だから……ごめん……。」



それに対して、私は怒るのだ。




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