逃がすもんか!
結婚とは、あの結婚らしい。
へえー、この子と結婚の約束を……ねえ……。
「マジ?」
「マジですよ、マジ。」
病院の待合室で、隣に座ってきたおばあさんに話しかけられた時に、ほんのわずかに漂ってくる口臭の、あの若干の不快感を感じた。
「なんで私があなたみたいな人と結婚の約束するわけ?」
「それは僕が訊きたいですよ。あなた、昨晩、僕に何したかわかってますか?」
どうやら佐田は被害者ヅラを決め込んだらしい。私が29年間、大事に大事に守ってきたヴァージンをおそらく奪ったであろうくせに、男らしくない。