逃がすもんか!
ヴァージンを29年間守ってきたくせに、私には結婚願望がある。
それも「ああ、結婚したいな。」なんて、夏場、ボロアパートから出てくる水のように生温いものじゃない。
物凄く結婚がしたいのだ。
でも、結婚しようにも相手がいないとできない。ヴァージンなわけだから、まともな恋愛も高校2年生の冬で止まっている。
その結婚願望を私はひた隠しにしてきた。押し殺してきた。同僚から合コンに誘われても頑なに断ってきた。
そうして、自ら出会いの場を切り捨て、少女漫画にありそうな、ある日、素敵な人と果たす運命的な出会いとやらを追い求めてきた。
昨晩、一人居酒屋で飲んでいたのもその素敵な人と果たす運命的な出会いとやらを求めるためだった。
その相手がまさか、こんな若い男の子だなんて。しかも、その子と一方的な結婚の約束をしてしまうなんて。
「人生、何があるかわからないものね。」
思わずそう呟いた。