プレゼント【前編】
結局、ロクに眠ることもできず朝を迎えてしまった。

「どうしようか。」

こんな幼稚臭い子供騙しな仕掛けを信じるわけじゃないけど何となく落ち着かずいつもより早く学校に行く事にした。

そうだ、誰か知らない子の机に入れてしまえばいい。そしたら嫌でも他の誰かの手に渡る。決して今回の事を真に受ける訳じゃない。ただ、処分にも困るから、と、言い訳を自分自身に何度も言い聞かせながら早朝の校舎内にやって来た。

とは言え……適当に入れるにしても誰の机にしようか。もちろん、同じクラス、学年の机には入れない。後で面倒な事になるのは目に見えてる。

一年の教室にするか。

私達の教室がある二年のフロアの真下が一年のフロア。階段を降りて一年の教室のある廊下を歩き出す。

もうこの際、どこでもいい。一番近くの教室にーーー

「へぇ、あんた、何でもない顔してた割には下級生に回すなんて。やる事、小者だよね。」

振り向くとそこに居たのはエリカだった。

「別に、そういうんじゃない…から。」

「へぇ、そういうんじゃないんだ。じゃあ、どういった事でそれ持って下級生のフロアうろついてんのよ。」

エリカにだけは見られたくなかった。

だってエリカと私はーーー

「ねぇ…、それ使っちゃえば?」

「えっ?」

「いいじゃない、使えば。誰かの手に渡って消されるよりあんたが先に消しちゃえばいいじゃん。」

「私は別に……」

「へぇ、一匹狼ぶってても怖気づくんだ。可愛いところあるじゃん、うちのお姉ちゃんは。」

お姉ちゃんだなんて、いつぶりに呼ばれただろう。

そう、私とエリカは姉妹。と言っても腹違い。うちのお父さんと今のお母さんとの間に生まれたのがエリカ。

だけどーーー

私とエリカは同級生。

何故ならエリカは私が生まれた半年後にこの世に生を受けた。

つまり私のお父さんはお母さんが妊娠中に浮気をし、そして数年後お母さんが病に倒れこの世を去った後、新しい家族として彼女達を迎え入れたのだ。

何事も無かったかのように。







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