プレゼント【前編】
ドスンと言うとても鈍い音が響いた。

なんでこんな事に……

慌てて窓から見下ろすとエリカは頭から血を流し両手両足を広げた状態で仰向けに倒れていた。

救急車を呼べば良いのかエリカの元に行く方が先なのか、パニック状態の私は動けないでいた。

早くに登校してたからまだ他の生徒の姿は見ていないけど、それも時間の問題だろう。

登校してきた誰かがエリカの姿を見たら……

窓からそのエリカを見下ろす私の姿を見ていたら……

「どうしよぅ……」

もしかしたら、さっき揉み合っているうちに私の手の中にあった万華鏡は偶然にも回転していたのかもしれない。

そしてーーー

あの瞬間、私は確かに思った。

しつこく無理やり万華鏡を奪おうとするエリカが邪魔だと。

事あるごとに私に突っかかってくるエリカ。

もうエリカなんていなくなればいいのにと。

「エリカがこうなったのはきっとこれだ。」

私にはこの偶然起きた事故はどうしても不幸のプレゼントである万華鏡により起こるべくして起きたようにしか思えなかった。

万華鏡をギュッと握りしめると私はその場から離れることにした。

窓際から離れる時、もう一度エリカの姿を見たら頭から流れている血がさっきよりも更に広がっていた。

ーーーまるで薔薇の花びらみたい

私はこんな時なのにエリカの身に起きた事よりももっと、もっとその血がじわりじわりと広がる様(さま)を見ていたいと思っていた。

気分が高揚するような初めて味わう不思議な感覚だった。

そんな感覚が私の体の中にあったなんて思いもしなかった。けれど決してその事にショックを受ける事もなく、寧ろ私は何かが吹っ切れた気がした。

もう一度だけ窓の下に横たわるエリカを見下ろすと

「無理やり取ろうとするからよ。馬鹿な子。」

自分のものとは思えないような冷たい声で吐き捨てるように言った。














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