眠り王子が完璧に目覚めたら
翼は和成に肩を押され後ろによろめいた時に、和成が玄関のドアを閉めようとしたのが分かった。
まだ何も伝えてないのに…
そう頭をよぎった時に、その閉じられようとしているドアを太く大きな手がガッツリと掴んだ。
し、室長…
翼は張りつめていた糸が切れたように、一気に涙がこみ上げてくる。
「すみませんけど、閉めないでもらえますか?」
室長は足でもそのドアを押し出し、鬼の形相で和成を睨んでいる。
和成は驚いた顔で、翼を覗き見た。
「あのどちら様でしょうか?」
城は自分の全身が怒りに支配されているのが分かった。
でも、何とか理性が翼のために暴れるなと必死に繋ぎ止めている。
「安達城と言います。
じょうは城と書いてじょう。
俺の素性が知りたければ、後でネットででも調べて下さい。
ちょっとした有名人なので」
そして、城は後ろにいる翼を引き寄せ、優しく肩を抱いた。
でも、和成を見る顔は冷酷非情ないつもの恐ろしい顔だ。