眠り王子が完璧に目覚めたら
その子の千鳥足は危なっかしくてしょうがない。
最初は5m程離れた所を歩いていた俺だが、今では伸ばせば手が届く距離まで近づいていた。
手に持っているカップ酒はフラフラ歩く度に少しずつこぼれ、今では半分以下まで減っている。
あ~、あのカップ酒を奪い取りたい…
しばらく歩くと、急にその子は道路の縁石に腰かけた。
吐きそうになっているのか、頭を自分の膝に押し付ける。
美人という事でただでさえ目立つのにフラフラ歩いてしゃがみ込んでしまったから、道行く若者男子が面白がってその子の側に群がって来た。
俺は、マジでどうかしている…
バカみたいにこの女の子を尾行して、その上あの群がって来た若者達が邪魔でしょうがない。
俺のその子に手を出すな…!
は?
いつから俺のその子になったんだ??
そんなくだらない自問自答を繰り返しながら、俺は無意識にその子の腰に手をかけ抱えて歩き出した。
その群がる若者達を鋭く睨みつけながら。
まだ手に持っているワンカップ小関のカップを、俺はここぞとばかりに奪い取る。
ほとんど空になっているそのカップを、自販機の横にあるゴミ箱にそっと捨てた。
それだけで俺は一つのミッションをクリアした気分になる。
でも、その子は俺にもたれながら、あんた誰?みたいな目で俺を見ている。
俺も分からないよ…
彼女の綺麗なそして酒のためにトロンとなった瞳は、ますます俺の心臓をナイフでぶっ刺し、キュンキュンがズキズキとなってズタズタになった俺の心臓はもう再生不能になってしまった。