眠り王子が完璧に目覚めたら
“喜び”は満月と共に



城は少し落ち込んでいた。
落ち込む自分がいることに、感情に支配されている事を実感する。

一昨日がプロジェクションマッピングのデザインの締切日だった。
昨日は、城を始め、広告宣伝部長、他選考委員の数名でその提出された作品を見た。

今までになく質の高い作品が集まった。
昨日は、一切誰の作品かは隠して真っ新な状態で選考委員は鑑賞した。
それは、城が考え編み出した選考のやり方だった。
確実に実力のある者を選ぶためで、その人の人となりとかは全く関係なくそういうしがらみを排除するために考えたものだった。

それが今、俺の首を絞めている。

翼は最後の最後まで、作品はもちろんの事どういう感じのものを作ったかさえ教えてくれなかった。
究極の真面目人間は、そういうコネ的なものを一番嫌っている。

でも、俺はやっぱり翼に傷ついてほしくない。
何日も残業して頑張ってきた姿を知っているから。

昨日の段階で、選考委員はそれぞれの作品に点数をつけ、もちろん城も名前を伏せた状態でいい物に点数をつけた。
点数の配分は城が5割を持っていて、残りの5割を他の選考委員がシェアしている。
よくも悪くも、城が高い点数をつけた者がほぼ採用になる。

どの作品も甲乙つけがたい程に、クオリティが高くその世界観を表現できていた。
城はどれが翼の作品か分からない状況で、でも、点数をつけなければならない。

もう、翼の事は考えずにいい物を選ぶしかなかった。
とういうか、それが正しい選考の在り方なのは、自分が一番知っている。

こうなったら、後は結果を祈るしかない…















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