眠り王子が完璧に目覚めたら
選考会の会議が終わると、城は一人残って慣例の作業を済ます。
まずは、採用された人間にテキストメッセージで採用の報告とその後のスケジュール等のファイルを送る。
そして、不採用の人間には不採用とだけのメッセージを送るだけだ。
やる気のある人間は、何が足りなかったかとかこれから学んでいくべき事などを城の元へ聞きに来る。
もちろん、点数や順位を聞きにくる人間もいる。
その都度、城は丁寧に今までは教えてきた。
いや、それは今回も変わらない…
でも、今の俺は気が重すぎた。
翼はもっとできる人間だと思っていた俺が、勝手に期待をして勝手に大きなチャンスを翼に与えた。
本当に自分の浅はかさにげんなりくる。
良かれと思ってした事は、結果的に翼を傷つける事になったのだから。
城は意を決して、不採用通知の送信ボタンを押した。
2秒後には、翼の元へもこの通知が確実に届くだろう。
城は中々室長室に足が向かない。
これを機会に、先延ばしにしていた社長室へ行ったりして時間を潰した。
社長とは実のある話ができ、少しだけ気分が上向いた。
この流れなら翼に会える。
というか、俺はどんだけヘタレで意気地なしなんだ…?
感情がそうさせているのなら、俺はやっぱり感情と上手に付き合えていない…?
自問自答を繰り返しながら牛歩のような速度で室長室へ向かうが、それでも、残念ながら室長室はもう目の前に迫っていた。