眠り王子が完璧に目覚めたら
翼は駅前のデパートでちょっと奮発して美味しいワインを買った。
いつも眺めるだけで我慢していたワインだけど、今日は自分のためにご褒美をしてあげたかった。
結果はどうあれ、一生懸命取り組んだのは間違いない。
悔しくないと言えば嘘になるけど、でも、今日、林君の作品を見て愕然とした。
何もかもが違い過ぎて、自分の素朴な作品がちょっとだけ恥ずかしかった。
でも、それでも、私は頑張った。
だから、今日は、きっとこれから努力していくであろう私のために慰めと激励の乾杯をしてあげたい。
翼は家の鍵を回すと、開いている事に驚いた。
ドアを開けると、とてもいい匂いが廊下の方まで漂っている。
「城、今日は出先で遅くなるはずじゃなかった?」
最近の私は、平気で城を呼べるようになった。
そんな私の変化に、城は嬉しくてたまらない様子が色々な場面で見てとれる。
「出先だけど遅くないよ。
ほら、今日は翼のためにご馳走を作ったぞ」
テーブルの上には、翼の大好物ばかり載っている。
「結果はどうであれ、翼が必死に頑張った事は俺がよく分かってる。
だから、今日はお疲れ様会だ」
会社では気が張っていた翼は、城のその優しい一言で大粒の涙がこぼれ始めた。
翼はワインをテーブルに置くと、城に抱きついた。
「ほ、本当はすごく悔しい…
でも、頑張る…
城を唸らせるほどの作品を、いつか必ず作ってやるから…」
城は優しく翼の頭にキスをする。
「絶対、作れるよ…
俺の翼は、才能はあるし、最高に頑張り屋だからね。
近い未来かな。
楽しみに待ってるよ…」