眠り王子が完璧に目覚めたら



イブの前日、城は自分の家で、明日のイブのためのご馳走の下ごしらえをしていた。

翼の家から小さなクリスマスツリーも持ってきた。
城の家にクリスマスグッズなんてあるはずもなく、今日は翼が残業のため、城は内緒で翼の家のクローゼットからこのツリーを探し出す事に成功した。

本当は大きなクリスマスツリーを新調する予定だったのだが、さすがに城一人でクリスマスツリーを買いに行く勇気はなく、今年はこの年季の入ったツリーで我慢する事にした。

城の殺風景な部屋に、ピカピカと装飾されたツリーだけがクリスマス感を漂わせている。

城は、このだだっ広い部屋をぐるりと見回した。
数か月前は、この部屋こそが城の自慢の空間だった。
必要な物以外は全て排除して、もちろん塵一つ落ちていないし塵が出る事もなかった。
キッチンに関しては、一人分を料理するだけの生活に出る洗い物はほんのわずかだ。
汚れるなんてあり得ない。
それが、城の自慢でもあり癒しの空間だった。

でも、今は、別の空間に来たようなそんな気分で何だか落ち着かない。
温もりのある生活に慣れてしまった城は、この自慢だったはずの無機質な雰囲気が一層に寂しさを助長する。

今すぐに、翼に会いたい…
そして、あのゴチャゴチャした部屋に帰りたい…

城は買い込んできた食材を急いで冷蔵庫に入れ、下ごしらえだけパッパッと済ませた。
シャンパンとケーキは明日準備する事にしているので、他に何かもれはないか頭の中で確認してみる。

というか、俺は一体どうしちまったんだ…?
サンタさんが来るのを夢見る子供のように、クリスマスが訪れる事にウキウキワクワク感が止まらない。

翼の最高の笑顔を引き出すために、俺は今夜は寝ずにスケジュールを考えるだろう。


きっと、去年の俺が今の俺を見たら、何て顔をするだろうか…











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