眠り王子が完璧に目覚めたら
城は気持ち程度の部屋の装飾を済ませ荷物を持って帰ろうとした時、携帯が鳴り出し驚いた。
この部屋は静か過ぎる…
ま、俺の部屋なんだけど…
城は翼からだと思い、ディスプレイ画面を確認せずに電話に出た。
「やっと、出てくれたじゃないか…」
城はその声を聞いてゲンナリした。
ずっと、連絡を避けていた親友の太一からだった。
「城、お前、元気にしてたか?
夏に会って以来、俺達の連絡を絶ってただろ?
ま、それは今度ゆっくりと話すとして、明後日のクリスマスはいつもの店を予約してるからな。
いつものように集合は9時だから、来れるだろ?
おい、城、聞いてるか~?」
城は小さくため息をついて、蚊の鳴くような小さな声で聞いてるよと言った。
「ねえ? 何かあったのか?
元気ないな」
城はいつかは太一と陽介には話さなきゃと思いつつ、面倒くさ過ぎてずっと後回しにしていた。
翼の話をする時の、二人の顔が容易に想像できるから。
出来る事なら死ぬまで話したくはないけれど、一応は親友と呼ぶ間柄の二人にそういうわけはいかない事くらい城も承知していた。
「お前達が驚くような事が起きた…」
「え? 何? もしや? 例の?」
城は今度は深くため息をつき、電話越しの太一に諭すようにこう教えた。
「明後日、話すから…
それまでは何も言わないし、聞いてほしくない。
そう陽介にも伝えといて」