眠り王子が完璧に目覚めたら
そして、とうとうクリスマスイブがやって来た。
翼と城は会社が終わると、一緒に城のマンションへ向かった。
翼の家と違い城の家は都心のど真ん中にあるのに、今日の城は車で通勤していた。
「どうして車なの…?」
城は肩をすくめて地下駐車場に停めてある車のキイを開ける。
「今、一番話題のパティシエにケーキを注文したんだ。
そしたら、そのパティシエのかまえているお店が結構遠かった。
久しぶりにドライブかてら買いに行くのもいいかなって思って」
翼は運転席に座った城に助手席側から抱きついた。
「ありがとう… 本当に嬉しい…
だって、本当は女子の私がそういう準備とかしなきゃいけないのに、全部城に任せてばっかりで」
城は翼の鼻の頭に軽くキスをした。
「いい経験をさせてもらってるよ。
だって、俺はクリスマスらしいクリスマスなんて今まで味わった事がないし、しようとも思わなかった人間だから。
だから、恥ずかしいけど、俺の知識は全てネットの知恵袋から拝借している」
翼は可笑しくて声を出して笑った。
城は涼しい顔をして、都心のど真ん中に車を滑らせる。
イブの夜の割りには、道路は空いていた。
「城、雪が降ってきた…」
薄暗くなる空に、真っ白な綿のような雪が風に舞いながら降りてくる。
イブの夜に都心で雪が降る確率がいかに低いのを城は知っていた。
ま、残念ながら、それも知恵袋で仕入れた情報だけれども。