眠り王子が完璧に目覚めたら
城は頼んでいたクリスマスケーキも受け取り、近くのデパートで美味しいシャンパンも買った。
そして、城のマンションに向かう頃には、外の雪も本格的に降り始めた。
日が暮れて夜の空は紫色に変わり、賑やかな明るいイブの夜にひらひら舞い降りる雪は幻想的な雰囲気を醸し出す。
翼は初めて城のマンションへやって来た。
新宿駅からほど近いそのマンションは、超高層ビルの類に入る程の高さだった。
「城って、やっぱり凄い人だったんだね」
翼は売れっ子空間デザイナーの城の存在を、改めて再認識した。
お給料とか貯金とかそんな話は一度もした事がないけれど、きっとこの感じじゃ相当なお金持ちのはず。
だって、今までの城の生活から、お金を使う事なんてほとんど思いつかないし、それにそういう生活を長くしてきたはずだから。
翼はマンションのエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む城の顔を、まじまじと見つめた。
何で城はこんなに豪華なマンションに住んでるのに、今は私のあんな狭いマンションに住んでいるのだろう…?
あ、そうか、私がここに来ればいいのか…?
来ていいの…?
来たい…!
こんな豪華なマンションに住んでみたいよ~~
翼は初めて東京に出てきた田舎者みたいに、エレベーターの速さや中の豪華な装飾に目を奪われている。
そして、38階に着いた翼が何より驚いたのは、城の部屋が一番奥の角部屋で、この階の部屋の中で一番にグレードが高いという事だった。
城は、お洒落な門を開き翼を中に招き入れると、指紋認証で玄関のドアを開けた。
「ようこそ、いらっしゃい、僕の可愛い天使」