眠り王子が完璧に目覚めたら
そのホテルの前に着いた時、彼女はすでに眠りについていた。
俺に寄りかかって小さな寝息を立てている。
俺はそんな彼女を抱えてホテルに入った。
きっと、低価格なホテルなのだろう。
フロントには二人掛けのソファと小さな丸テーブルが置いているだけだ。
俺はとりあえず彼女をソファに寝かせた。
まるで自分のベッドにおろされたかのように、幸せそうな顔をしてそこに丸くなる。
「すみません、この人、酔っ払ってて…
ホテルはここだって言うんですけど、名前は分かりません…」
フロントの人に俺がそう言うと、その人は顔をしかめて俺と彼女を交互に見ている。
「あの、私はちょっとその方に見覚えがないので、お客様の方で、その方を起こしてもらえませんか?
名前が分からなければ調べる事もできないので…」
俺はもっともだと思い、彼女の隣に腰かけた。
時計を見ると、もう夜中の2時を回っている。
ツンツン、ツンツン。
俺が彼女の肩を突くと、最高の笑顔で俺を見た。
目は閉じているが…
「ねえ、名前だけ教えて。
名前、何て言うの?」
「後藤和成でしょ?
忘れちゃダメだよ…」
いやいや、そいつの名前は死ぬほど聞いた。
「いや、君のだよ。
名前、何て言うの…?」