眠り王子が完璧に目覚めたら
「もうすくぐしたら室長が帰って来るから、そしたら室長室に挨拶に行きましょうね」
「はい」
私はそう返事して、桜井さんから渡された書類に目を通す。
「あ、それと、これは言っといた方がいいかな…」
「何ですか??」
私がそう聞くと、桜井さんは私の方へ寄ってきて小さな声で話し出した。
「室長の事なんだけど…
ちょっと変わった人で、人間に興味がないというか、自分の世界で生きているような人なの。
でも、仕事に関しては天才的にすごくて、皆、尊敬してる。
ごめんね、何が言いたいかというと、室長は人間じゃなくてロボットだと思って接した方が楽だということ」
ロボット??
「え、ごめんなさい、何だかよく意味が分かりません。
例えば、どんな事を言ったりしたりする方なんですか?
ロボットって…
まずはロボットとどう付き合えばいいのかも分からないです…」
桜井さんは苦笑いをして私を見た。
「例えば、女性の扱い方から言うと、前にこんな事があった。
いずれ分かると思うけど、上の階の広報企画部に40歳になるお局様がいるんだけど、とにかくプライドが高くて美人は美人なんだけど、性格がきつくてね…
ある時、デザイン室と企画広報部の合同会議をした時に、うちの室長がやらかしちゃって…」
「な、何をやらかしたんですか?」
桜井さんはその時の事を思い出しているのか、笑いが止まらなくなっている。