眠り王子が完璧に目覚めたら



「あ、室長が帰って来たみたいだから、挨拶に行くよ」


私がそう言われて室長室に目をやると、ジーンズに白いシャツを着た男の人の後ろ姿が見えた。
そのまま室長室に入って行く。


「桜井さん、普通に挨拶をすればいいんですよね?」


「うん、それで大丈夫」


私は桜井さんの後に付いて行くだけだ。

トントン。


「失礼します、室長、今日から勤務の小牧さんを連れて来ました」


私が恐る恐る室長室に入ると、そのいわくつきの男性は訝しい目で私を見ている。


「あ、初めまして、小牧翼と言います。
まだ分からない事ばかりですが、一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」


私は頭を下げて、もう一度その室長を見た。
何だかよく分からないけど、魚が死んだような目で私を見ている。


「じゃ、小牧さん、行こうか」


桜井さんがそう言うと、室長は急に立ち上がった。


「桜井さん、聞いてない?
この人は、とりあえず、俺の秘書的な仕事をしてもらう事になったんだ」


桜井さんは驚いた顔をして私を見た。
そして、その直後に気の毒そうな顔に変わる。


「ああ、そうなんですね…」


「桜井さんは、もう行っていいよ。
後は俺が教えるから」


私は泣きそうになった。
なんだか、怖い…

この目つきにどうしても慣れない。

何か私しましたか~~?










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