眠り王子が完璧に目覚めたら



室長の目はもう表情を失くしている。
私の目の前に立つと、私の頭のてっぺんからつま先まで舐めるように隈なく観察し始めた。


「身長は何センチ?」


「あ、はい、166cmです…」


「体重は?」


「は?」


さっきの桜井さんの話を思い出した。
女性に聞いてはいけない事とかそんなのお構いなしの人なのだ。

でも、私は言わない!
室長が私にどんなイメージを持っているか知らないけど、私は嫌な事は嫌とちゃんと言える人間なんです!

と、心で思ってはいても、さすがに初対面のそれでいて職場の上司にそんな横暴な態度は取れなかった。


「体重は…」


私がそう言いかけた時、室長が私の頭をまじまじと見ている事に気づいた。

ま、まさか…
白髪…?

いや、25歳の私はまだ白髪は生えていない、はず…?
それに、今朝、鏡で見た時は、何もなかった。
うん、なかった…
いや、多分、なかった…

私はあまりに近づいてくる室長が怖くなり、少し後ずさった。
でも、室長は、そんな事もお構いなしに私の頭をしつこく見ている。

きっと、白髪を見つけたんだ…
そうじゃないと、こんなに私の頭から目を離せない理由はない…

私は泣きそうになるのをグッと堪えていると、近づき過ぎていた室長が三歩程私から離れた。



「ねえ、何で髪切ったんだ?」











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