眠り王子が完璧に目覚めたら



それほど楽しみに9月1日を待っていた俺なのに、いきなり朝から出先に行く用事が入った。

ガッカリ感というものを初めて知った。
ガッカリ、ガックシ、バカみたいに落ち込んでしまう。

恋をしているからこんな感情というものがまとわりつくのか?
でも、その分、焦らされた分だけ、ウキウキワクワクドキドキ感が半端ない。

俺は翼と再会したら、気を失ってしまうかもしれない。
こんな29歳のバカな男をどうか皆笑って下さい…

暴走だけはしないように、一か月前までの冷静沈着な俺が手綱を握る。
手綱を握るこの手を離さないように、俺は何度も深呼吸をした。

そして、朝の用事を済ませ、今、俺はビルの前に立っている。


やっと、翼に会える。

裏通りの母、本当にありがとう。



トントン。


「失礼します、室長、今日から勤務の小牧さんを連れて来ました」


俺は、高鳴る心臓を無視して、とりあえずクールな室長を装い窓際に立った。
桜井さんが後ろを振り向いて何か声をかけている。


そして、室長室に入って来た翼に、俺は言葉を失った。

か、髪が…

















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