眠り王子が完璧に目覚めたら
会議が終わると、翼はまた桜井さんに呼び止められた。
桜井さんは隣に座る室長に気を遣い、翼を仲間が待つ所まで連れて行く。
「ねえ、今夜は金曜日だから、小牧さんの歓迎会をしようって話になってるんだけど、小牧さんは大丈夫?」
翼は感動した顔で皆を見て、大きく頷いた。
「じゃ、決まりだね。
一応、このメンバーと、あと、他のデザイン室にいる若手にも声をかけてみる。
場所が決まったら、小牧さんのとこに伝えに行くから」
「ありがとうございます。
すごく嬉しいです」
この会社は若者が多いせいで、雰囲気も明るく自主性を重んじるために自由な社風だ。
翼は他の人達とハイタッチをして楽しんでいると、遠くから室長の声がした。
「行くぞ」
翼を含めて他の皆も一斉に室長の方を向く。
「なんか、室長、変わったよな」
「他人に興味なんてないはずなのに、すごい殺気を感じるんだけど」
ずっと勤めている人達の意見は、室長がおかしいという事だ。
「あ、じゃ、私、行きますね…
桜井さん、いつでも室長室に遊び来てください。
私、暇してますから…」
翼はそう言うと、会議室を出た廊下で不機嫌そうに待っている室長の元へ急いだ。