眠り王子が完璧に目覚めたら




……翼、僕の可愛い翼。
ふかふかのベッドで、ゆっくりおやすみ……


翼は久しぶりに幸せな夢を見ていた。
明け方に見る夢は現実と夢を行き来しているようで、妙に生々しい。
でも、今感じている生々しさは、穏やかで不思議と安息感で満たされていた。

どれくらいぶりだろう…?
ぐっすり眠った気がするのは。
こんなに気持ちのいい朝を迎えるなんて、何かいい事が起こるのかな…

翼はもったいない気持ちを心の奥に閉じ込めて、頑張って起きる事にした。
でも、どんどん現実が迫ってくると、変な頭痛に見舞われる。

そっか…
また、やらしかたのかもしれない…

まだ目を開ける事に戸惑っていた翼は、頭痛がする事を言い訳にしてまた眠ることにした。
今日は土曜日だし、会社は休みだし。

意識がどんどんはっきりしてくるのと同時に、自分の中の違和感に気付き始めた。

何? 私は一人じゃない…
どうやら私は誰かに後ろから抱き寄せられ、そして、私もその誰かの腕を胸元で抱いている。
私達が寝ているのはベッドの上で、え? ベッド?
もしかして、私は知らない誰かとホテルで一晩を過ごしたのかもしれない。

翼は勇気を振り絞って、思いっきり目を開けた。
私の目に映る景色は、いつも見慣れた部屋の景色で…

え??

翼は条件反射で、後ろで寝ている人間から一瞬で離れた。


マジで??
何で、室長、ここで寝てるんですか~~?










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