眠り王子が完璧に目覚めたら



翼はベッドから下り、まずは自分の部屋の変化に気が付いた。

段ボールは綺麗に奥に積み重ねられている。
そして、何よりも、ベッドが組み立てられている事だった。

和成と一緒に住んでいる時に使っていたこのベッドは、二人サイズだったけれど翼は大のお気に入りだった。
まずは寝心地がいいのはもちろんのこと、あとはベッドの四本の脚の支柱が、ラメ入りの紫色だということ。
中々こんなお洒落なベッドには出会わない。
大阪の友達は、元カレと一緒に寝てたベッドなんて捨てなきゃダメだよって言ってたけど、考えて考えたあげくやっぱり捨てられなかった。

でも、手軽に簡単に作れるベッドじゃなかったため分解するのは簡単だったけれど組み立てる事ができず、何度もトライしたが不器用な私の腕じゃ歯が立たなかった。

そんなベッドが、今、完璧な姿で私の目の前にある。
室長が寝ているのは想定外だけど…


「室長、室長…」


翼は熟睡している室長に声をかけたが、目を開ける気配はない。
その少しの時間で、翼はシャワーを浴びた。
いつもの事とは思いたくない。
こんな風に酔っ払って記憶を失くした次の日の朝は、自己嫌悪に苛まれる。
だから、この汗と酒にまみれた自分を早くリセットしたかった。

翼がシャワーから出てきても、まだ室長は眠っている。
翼は部屋着に着替えて、冷蔵庫の中にあるグレープフルーツを半分にして食べた。
酔った次の日の朝は、これがないと生きていけない。

翼はベッドに寄りかかって室長を見る。

本当に綺麗な顔…
寝顔がこんなに綺麗な男の人って、本当にいるんだ…







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