眠り王子が完璧に目覚めたら



城は、翼がシャワールームから出てきた頃には目を覚ましていた。
でも、こんなシチュエーションに慣れてないせいか、何て言って目覚めればいいのか見当がつかない。

おはよう…の後に、何をどう言えばいいんだ?

城が必死に目を開けずに頑張っていると、近くでいい匂いがし始めた。

グレープフルーツの匂い…

城はの心は一気に癒される。
そして、その香りの中に、翼の洗い立てのシャンプーの匂いも混ざっていた。

城は29年間嗅いだ事のない最高にいい匂いに、心を鷲づかみにされた。


「おはよう…」


城がそう言って目を覚ますと、素顔の翼が城の顔の間近で目をぱちくりさせている。


「し、室長、ありがとうございます…」


城が半分寝ぼけた頭で翼の言葉を理解する。


「このベッド、たいへんだったでしょう…?
それに、たぶん、また、私は酔っ払って…」


城は笑うのを堪えてコクンと頷いた。


「あ~、もう本当にごめんなさい…」


「許さないぞ」


「へ?」


「キスしないと許さない…」


城は無意識の中で、翼のくちびるにキスをした。
グレープフルーツの酸っぱい味が、城の頭と心に印をつける。


俺は翼の虜だ…
この最高のキスを、これから千回以上するぞ…

そうやって俺は息をするのも忘れるくらいに翼の味を堪能し、そしてその柔らかさに溺れていく。








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