眠り王子が完璧に目覚めたら



「じゃ、じゃあ…
人とつき合った事がない室長が、何でこんなにキスが上手いんですか…?」


翼はこんなに綺麗な顔をして、きめ細やかな白い肌を持っていて、そしていい匂いがして、それだけで俺を跪かせるだけの強烈な力を持っているのに、たまに、唖然とするような行動や言動が俺を悩ませた。


「それってダメなのか?」


「だって、女性を好きになって、キスをたくさんしてきたわけじゃないんでしょ?」


居たたまれなくなった城は、キッチンへ行き冷蔵庫から最後の一本の水を取り出した。
そのペットボトルを軽く振って、翼に飲んでいいか確認する。
まだ納得していない顔をしながら、翼は頷いた。


「確かに人を好きになった事はない。
それと、キスもたくさんした事はない」


普通の大人の男ならキザな台詞でも出てくるのかもしれないが、感情に関しては産まれたての雛のような城は、どんな時でも正直イズベストは変わらない。


「人を好きになった事もないのに、キスはした事があるんですか?」



「人を好きにならなきゃキスしちゃダメなのか?」


翼は下を俯いた。
城はせっかくキスの余韻に浸りたかったのに、翼の立て続けの質問に一気に目が覚めた。


「誰とキスをしたんですか…?
いつ? どこで? 何人と?

教えて下さい…」


翼は100%俺のタイプだけど、もしかして面倒臭いタイプの人間なのかもしれない。






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