眠り王子が完璧に目覚めたら
「お、終わりです…
私、そんな、安い女じゃないので…」
翼はそう言うと、城の腕の中からいなくなった。
「それに、室長、もうそろそろ帰った方がいいんじゃないでしょうか…?」
城は全く帰る気はない。
それより、後残っている段ボールを片付けてしまいたいくらいだ。
「ねえ、それより腹減った。
そこの駅前まで、一緒に買い物に行こう」
「今からですか…?」
翼は濡れっぱなしの髪に素顔でいる事が気になるらしい。
「あ、じゃ、俺一人で買い物に行ってくるよ。
せっかく、シャワー浴びたのに、また化粧したくないだろ?
欲しいものは?」
城は顔だけ洗って玄関に立った。
「あの、じゃ、果物屋さんがあるので、柑橘系のフルーツをお願いします」
翼の主食はミカンなのか?
「分かった。
あ、それと、俺が帰ってきたらちゃんと鍵を開けろよ、OK?」
城はそれが一番心配だった。
突拍子もない事をしでかすのが翼だから。
でも、酔っ払ってないから大丈夫だろう。
「それじゃ、行ってきます。
もう、鍵はかけなくていいからな」
外に出た城は、空が眩し過ぎて目をしかめた。
こんなに清々しい朝を迎えたのは、いつぶりだろう…
いや、生まれて初めてだ、きっと…