眠り王子が完璧に目覚めたら
翼は室長が買ってきた物を冷蔵庫に入れながら、また嫌な予感が頭をよぎった。
室長が買ってきた物は、多分何か料理をしようと思っているような品が多い。
野菜に肉に魚に香辛料に、パンに果物に…
きっと、近くのコンビニではなく、駅前のスーパーで買い物したに違いなかった。
それにしても…
この大量のグレープフルーツとミカンを、私は毎日何個食べれば腐らずに消化できるのだろうか…
「あ~、気持ち良かった~~」
さっき、翼は室長の着替えの上にバスタオルを置いて来た。
室長は脱いだ物を綺麗に畳んで洗濯機の横の台に並べていて、それを見ただけで綺麗好きの几帳面だと分かる。
がさつな私は、ちょっと嬉しかった。
好きで片付けをしてくれるのなら、こちらは何の気兼ねをする必要はないから。
「このタオルふかふかしてていいね…」
室長はそれだけの事で幸せそうな顔をしている。
感情出しまくりだ。
ウニクロで買ってきた黒い短パンに白いTシャツが抜群に似合っている。
顔も良くてスタイルも良くて、性格は難ありだけど、その以前の彼女が好きじゃなくてもいいからつき合ってほしいと言ってしまうのも、分からないではなかった。
「よし、じゃ、朝ごはんにしよう。
もう、俺はマジで腹が減ってる。
パンとか買ってあっただろ?」
室長はそう言いながら、何かを探している。
「何かお探しですか?」
「この家にテーブルはないの?」
翼は肩をすくめて困ったように笑った。
「キッチン用の二人掛けのテーブルを、引っ越し屋さんが分解してどの段ボールに入れたのかが分からないんです。
小さなテーブルだから、この同じような箱の中に入ってるとは思うんですけど…」