眠り王子が完璧に目覚めたら
可愛らしかった室長の顔から笑みが消えた。
不機嫌そうに目を細めて翼を見ている。
「じゃ、付き合おう」
室長は、また無邪気な顔に戻った。
そして、たくさん買ってきたフルーツを甘くしたサイダーに漬けている瓶を、冷蔵庫に取りに行く。
翼の家にある唯一のガラスのカップに、その色とりどりの果物を取り分け始めた。
フルーツに目がない翼はゴクリと唾を飲み込む。
でも、室長の突拍子もない提案を受けるわけにはいかない。
「室長、そんな簡単に付き合う事なんてできません」
室長は翼の見ている目の前で、一つのガラスのカップにどんどんてんこ盛りにフルーツを入れていく。
「何で? 理由は?」
「そ、それは、会社の云々を別としても、私の中でまだ前彼の整理もついていないし、他の人とつき合う気になれないんです…
ごめんなさい…」
室長はフルーツを食べるためのスプーンを持ったまま、翼をジッと見る。
「来週になったら、俺がその和成の住所を調べ上げる。
会社が分かってるんだから、そんなのすぐに調べられるよ。
それで、そいつに会いに行って、気が済むまで話してこい。
それで、俺達は正式に付き合う。
分かった?」
は? 分かったって言われても…