眠り王子が完璧に目覚めたら



翼はしばらく考えて、それでやっと室長の顔を見た。


「…その、和成と話ができる場を作ってくれるのは、すごく有り難いんですけど…」


翼がもぞもぞ話していると、室長はそのフルーツがてんこ盛りに入っているカップをスプーンでコンコンと叩いた。
このフルーツが目に入らないか!と言わんばかりに…


「どっちみち、和成とは復縁はないんだから。
それは相手がどうのじゃなくて、俺と出会ったから。

だから、俺とつき合う。

分かった?
うんって言ったら、これ食べていいぞ」


やっぱり、そうだと思った…
私の大好物を取引の報酬としてこのテーブルの上に載せてきた。

翼、どうするの…?
ちゃんとよく考えてって、生真面目な私がそう囁いてくるけれど、何だか、私の心の中ではもう室長を受け入れている。

会社の上司とかそんな事を抜きにしたら、室長の顔やスタイルはピッタリのタイプだし、私の事を必要以上に大切にしてくれるし、こんなに落ち込んでいる時期だからかもしれないけど、私の心は室長によって癒されている。


室長はまたカップをコンコンと叩いた。


「分かりました…
おつき合いします…

でも、付き合ってちょっと違うとか、ちょっと無理だとか思ったら、すぐに別れてください。
私もその時は、すぐに室長に言いますので」


室長は意地悪そうなでも満足気な笑みを浮かべて、うんと頷いた。
私がおかわりを待っているワンコみたいにじっとしていると、室長はそのてんこ盛りのフルーツを私の目の前に置いてくれた。


「俺のものになったからには、もっと最高に美味しい物をたくさん食べさせてやるから。
今日は俺の分も食べていいぞ」









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