眠り王子が完璧に目覚めたら
“怒り”の矛先は和成
月曜日になり、城と翼は何もなかったように室長室で過ごしている。
城は結局家には帰らずに、翼の家から会社へ来た。
スーツは陰干しし、ワイシャツは洗濯して綺麗にアイロンで伸ばし、金曜日と同じ格好で平然と働いている。
翼には新しいプロジェクトの企画書を考えるようにたくさんの仕事を与えた。
新しい商業ビルのオープニングセレモニーに披露する30秒程度のプロジェクションマッピングは、翼以外の人間にも企画提案を出すよう進めている。
その中でいい物を選ぶ、そこにえこひいきがあってはならない。
でも、城は楽しそうに仕事をする翼を見ていると、どにかして力になりたいというプロらしからぬ邪な思いが湧き出て困っていた。
いや、それよりも、もっと城の頭をいっぱいにしている事がある。
城は午前の仕事を猛スピードで済ませ、昼前に少しだけ時間を作った。
とにかく早く和成の住所を調べなければ…
城は、昨夜の出来事を何度も何度も思い返した。
土曜日の晩は、さすがに自分自身を自制できた。
でも、昨夜は、お互い一緒にいる事にも慣れてきて、特に俺は、翼を抱きたくて抱きたくて頭がおかしくなりそうだった。
夜の散歩を済ませそれぞれシャワーを浴びて、そして前日に作っておいたサングリアを仲良く飲んだ。
たくさんのフルーツが漬かったワインは、酸味と甘みが程よく調和して、風呂上りの体に沁み込んでいく。
翼がまた酔っ払うのは嫌だったので、コップ一杯に果物を何切れかおいて、それで我慢した。
でも、いい感じで甘いワインは体を駆け巡り、俺の中の本能の部分はその甘ったるいアルコールのせいでムクムク目を覚まし始める。