眠り王子が完璧に目覚めたら
城は、思いのほか、和成の住所を調べる事にてこずっていた。
和成の勤め先が、城の管轄外の職種だったから。
最先端の医療機器を製造し販売している和成の会社は、世界的にも有名でかなりの一流企業だった。
いわゆる理系産業であって、和成の得意とする文系企業ではない。
でも、一つだけ強力なコネがある。
親友の太一の実家は日本でも三本の指に入る大企業で、ああ見えて太一はそこの跡取りだった。
太一の人脈ならば調べるのに一時間もかからないだろう。
でも、やめておく。
まだ、太一や陽介にはこの状況を教えたくない。
あいつらは新宿の裏通りの母の話を知っているし、俺が予言通りになっていると知れば確実に面白がって翼に無理やりにでも会いに来るはずだから。
結局、午前の空いた時間では、和成の会社の住所くらいしか分からなかった。
「城ちゃん、ちょっと大事な話があるんだけど、今いいかな?」
人事部長の片桐君がいいタイミングでやって来た。
「ああ、いいけど、何か?」
すると、片桐君は翼の方へ行き、少しの間席を外してほしいと言っている。
翼は慌てて室長室から出て行った。
城はいつもの無表情になっている。
というより、何勝手に翼を追い出してるんだ?とムカついていた。
能面にこけしにロボットに、きっとそれ以上に恐ろしい顔をしているだろう。
「社長からの言付けを預かって来た」