眠り王子が完璧に目覚めたら
「何だ?」
片桐は城の機嫌の悪さに驚いた。
今まで一度もこんな表情を見た事がない。
城の顔にはいつも変わらない目と鼻と口がついているだけだったのに、今日のそれぞれのパーツは線で例えると全てが斜めに上がっている。
「城ちゃん、どうしたの?」
「どうもしない、それより用件は何だ?」
城はこの片桐を早く追い出したかった。
「独立の話だよ。
色んな噂が社長の耳に入り過ぎてて、ちゃんとした情報を本人から聞きたいとの事。
と、いうことだから」
城は独立というワードを聞いて、また邪な考えが脳裏をかすめた。
この片桐を利用すればいい。
「その独立の話だけど、片桐君はまだ俺の元へ来たいと思ってる?」
片桐君は前のめりになってうんうん頷いている。
「悪いんだけど、片桐君…
また、力を貸してほしい事があるんだ」
「何ですか? 何でも言って下さい!」
城はほくそ笑みながら片桐君を見た。
「人捜しをしてほしいんだ。
それも住所だけ調べてほしい。
大至急、最重要事項で内密でお願いしたい」
俺は部下と上司の関係とか全く何も興味はないし、誰にどう思われようと俺が良ければ何の問題もない。
でも、この片桐君は非常に役に立って、近くに置いてもいいと思える貴重な人物だ。
そして、彼の仕事に無駄はない。
翌日には、その最重要事項の案件はもう俺の元へ届いた。