眠り王子が完璧に目覚めたら



翼はどういうわけか、今夜も室長の手料理をご馳走になっている。


そもそも週末にひょんな事から室長がこの家に三日も寝泊まりし、月曜日は時間差で同じ会社に出勤した。
でも、翼の中では、月曜日の夜からはいつもの一人の日常が始まると思っていた。
コンビニで軽食を買って家へ帰り、シャワーを浴びて室長が組み立ててくれたテーブルで室長が作ってくれたサングリアのワインを飲みながら夕食を取ろうと思った時に、家のチャイムが鳴った。

玄関ドアの穴から外を覗くと、そこには大きなスーツケースを持った室長が立っていた。


「室長?? どうしたんですか??」


私は嫌な予感を払いつつ、毎度のいつもの質問を室長へ投げかける。


「しばらくここに泊まる事にしたから」


室長はそう言うと、笑顔でズカズカ中へ入ってくる。
室長の笑顔の理由は、私がサングリアのワインを室長と一緒に買ったワイングラスで飲んでいたから。
子供のようにすぐに感情が顔に出る室長の事を、私はもう手に取るほど何でも分かる。


「しばらく泊まるって…
何日も二人でこの部屋に暮らすには狭すぎですよ…」


「いまから食事するとこ?」


全然、話を聞いてない…


「…はい」


「じゃ、もうちょっと待って」


室長はそう言うと、冷蔵庫からタッパーに詰めた下ごしらえ済みの材料を取り出した。
そして、室長の大きなスーツケースの中から、フライパンや鍋や高級そうな調理器具が次から次に出てくる。


「俺も腹ペコなんだ。
ちゃっちゃと作るから一緒に食べよう」







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