眠り王子が完璧に目覚めたら



というわけで、今夜も室長は我が家へ普通に帰ってきて、また最高に美味しい料理を作ってくれている。

今夜のメニューは、レストランでしか見た事のないお洒落な料理だ。
それもちゃんとしたコースメニューになっていて、時間をあけて室長が運んで来る。

室長は料理を作り、配膳をして、そして私と一緒に食べる。
コース仕立てなので、とにかく見ていて目が回るほど忙しい。
でも、とびっきりの笑顔でちょこちょこ動き回る室長を見ていると、本当に楽しそうなのが分かった。
そして、最後のデザートを食べながら、室長は今まで以上の笑みを浮かべて私を見た。


「翼、グッドニュースがある」


最近、室長は私の事を翼と呼ぶ。
でも、私は、室長を城なんて呼べやしない。
呼んでほしそうな事をたまに言うけれど…


「グッドニュース?」


室長はもったいぶって中々その内容を教えてくれない。
私は室長の手作りの焼きリンゴを頬張りながら、気長に待った。


「翼に今一番必要な物…」


室長はそう言って、小さな紙切れをテーブルの上に置いた。


「何ですか、これ?」


室長は私の質問にかぶせるように、すぐに答えを言ってくれた。


「和成の住所が分かった」


翼は口いっぱいに頬張っていた焼きリンゴを驚いて慌てて飲み込むと、喉に詰まって何度か咳き込んだ。
そして、恐る恐るその住所を見てみると、翼が聞いていた場所とは全く違う事に改めて落ち込んでしまった。


「今から会いに行くか…?」



へ?
今から??





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