眠り王子が完璧に目覚めたら
「い、今からなんて、無理です…
もう、何時だと思ってるんですか?」
翼は室長の顔を見て悪い予感がした。
もう行く気満々の顔をしている。
「だって夜の方がいいだろ?
その方が和成だって家に帰って来てるだろうし」
翼は室長の話は無視してソファに寝転んだ。
全く行く気がないという事を察してほしくて、わざとあくびをしたりする。
「俺は今から行きたい」
俺はって…
室長には関係ない事なんですけど…
「行かないです!
それに室長を連れて行く気もありませんから」
翼はそこら辺の女の子と違うという事を、室長に分かってほしかった。
自己主張ははっきりするし、嫌といったら絶対嫌。
でも、室長はそんな私の隣に無理やり入って来た。
「じゃ、いつ行くんだよ…」
「室長が知らない間に行ってきます。
だから、この住所は本当に有り難くいただきますけど、その後の事は私の考えで動くので、室長は何も気にかけないで大丈夫です」
室長は怒られた子犬のような顔をしている。
感情が目覚めたとはいえ、目覚め過ぎだ。
室長のこのあどけない感情は、私の母性本能を的を得て刺激した。
「…じゃ、週末に行きます。
和成だって仕事をしている身なので平日にストレスを与えたくないし、私自身も仕事はちゃんとやりたいので…」
「週末のいつ?」
翼は何も考えられない。
でも、室長の容赦ない質問に慌てて答えた。
「土曜日の夜に、行きます…」