眠り王子が完璧に目覚めたら



翼はそう言うと、城の脇腹をこちょこちょした。
さすがの城も笑ってしまう。
今までの人生で脇腹をこちょこちょされるなんて、あり得なかったから。


「室長、その笑顔を他の人にも見せて下さい…
そうじゃないと、また変なあだ名を付けられちゃいますよ」


城は大きくため息をついた。


「無理だな…
俺の感情は翼限定みたいだから。
あいつらを見たところで、何の感情も湧いてこない。
残念ながら」


翼は半分呆れたようなそれでいて喜んでいるような、不思議な笑みを浮かべている。


「今日は?
金曜日だったっけ?」


城はまた口に出してしまう。
昨夜も翼から、その事は会社では考えないようにと言われたばかりなのに。


「もう、室長…」


城は卓上カレンダーの今日の日付を半分だけ塗りつぶした。
本当に俺はアホだ。
でも、俺の中では、翼を想う感情の波が嵐のように渦巻いている。
感情初心者の俺は、何をしてもこの状況を打破することはできない。
いや、打破する気力もない。




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