眠り王子が完璧に目覚めたら




「翼、今夜は前夜祭をするそ。
明日に備えて栄養を蓄えておかなくちゃ。
よし、今日はステーキに決まり!

俺はデパートに寄って美味しい肉を買ってくるから、楽しみに待ってて」


城はご機嫌になった。
単純過ぎて悲しくなるが、でもそうなるのだからしょうがない。


「室長、その笑顔を忘れないで下さいね」


城は翼からそう言われると、とりあえず頷いた。
でも明日の事を考えると、不安の波も押し寄せてくる。

明日、翼について一緒に行くつもりでいるけれど、俺は冷静に落ち着いて翼と和成を見る事ができるのか…?
今の状況でこんなにイラついているのに、明日、もし、翼が和成に酷い言葉でも言われたものなら俺はどうなってしまうのだろう…?

城は頭を振った。
そんなの考えたところで始まらない。


「ねえ、一つだけ約束してほしい…」


城が低い声でそう言うと、翼は笑顔を消して真剣な目で城の方を向いた。


「何ですか?」


「和成に何を言われようと、お前の帰って来る場所は俺だから…

それを忘れるなよ」


翼の頬が少し赤く染まったように見える。
でも、恋愛初心者の俺には、それが納得の赤みなのか反抗の赤みなのか分からない。

でも、翼が泣こうがわめこうが、俺は、翼を連れて帰るだけだ。

肉を食べて精を付けなきゃいけないのは俺の方かもしれない。


とにかく早く土曜日になってくれ…







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