たった二文字が言えなくて
「明日10時に三角公園のベンチにいるわ」



そんなセリフを、通り過ぎ際に静菜ちゃんが呟いた。



「し、静菜ちゃん!」


「……何よ」



迷惑そうに振り向く。



「ありがとう!どうしたらいいんだろうって思ってた」


「聞けばいいじゃない。自分で」


「はは。そうだよね。でも、なんか聞きにくくて」



なんだろう。
この子は他の子と全然違う気がする。



「まぁ、普段デートなんて自分から誘わないとものね」



フッて笑う彼女の横顔がとても綺麗で。
僕は考えることを一切できなくなった。



「遅れたら帰るからね」



その言葉を最後に静菜ちゃんは、友達と帰っていった。



……なんだこれ。
心臓の音が鳴り止まない。



「……嘘だろ」



恋なんてしなことない。
初恋だってまだだ。

恋をするなら自分のことを好きなやつって思って。
自分のことをまったく見ない女の子なんて不毛だろ。

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