糖度高めな秘密の密会はいかが?
そう言いながらドアを開けて『どうぞ』とエスコートしてくれる仕草は、王子様そのものだと思う。

カウンターに座り、カクテルで『お疲れ様』と言って乾杯をした。

仕事の話とかドラマの話をしながら、あっという間に一杯目のカクテルはなくなった。

二杯目のカクテルに口を付けた時に、ほろ酔い気味の香坂君が言った。

「…さっきの事なんだけど、ゆかりちゃんが良ければ、これからもこうして会ってくれる?」

隣に座って、顔を覗き込むように言われたら鼓動が早くなって仕方ない。

「うん…私の方こそ、よろしくお願いします…」

お酒のせいで顔が火照っているのか、香坂君のせいで火照っているのか、とにかく熱い。

自然と目が合い、二人で微笑む。

二杯目を飲み干して、バーの外に出ると、ひんやりとした空気が私の火照りを冷ました。

「夜は寒いね…」

10月下旬だが昼間は20度近くまで気温が上がる日もあるが、朝晩は冷え込む。

どちらともなく当たり前の様に、冷えた手を重ねていた。

香坂君の手は意外にも骨ばっていて大きくて、男の子の手だなぁ・・・と感じられた。

「ゆかりちゃん、気になっている事を聞いてもいい?」

駅まで歩く途中、お互いに酔いが少しずつ覚めてきた頃だった。

私からはあえて話さなかったが、香坂君の聞きたい事は、恐らくカフェでの日下部さんとの会話についてだろう。
< 10 / 216 >

この作品をシェア

pagetop