糖度高めな秘密の密会はいかが?
日下部さんの食事が済むと「何も聞かずに静かに着いてきて」と言われてエレベーターの中。

「また停止しないかな、エレベーター…」

「しませんっ!」

社内には警備員さん位しか残っては居なかった夜の出来事。

綾美には話したけれど、他の人は知らない秘密の出来事。

朝、出勤したら"エレベーターが故障したらしい"と話題になったが、私と日下部さんが閉じ込められた事は警備員さんしか知らないし、警備員さんも私達の名前など知らないから、皆には知られる事も無い。

勿論、優しい一面の日下部さんは私だけの秘密。

「ここって…!?」

一度も降りたことがない、会社の最上階。

「副社長室。来客も居ないから大丈夫だ」

トントン。

「え、ちょ、勝手に…!?」

日下部さんはノックをしただけで、返事がないままドアを開ける。

右手首を引っ張られて、中へと入れられた。

「ゆかり…?と…。何しに来たの?」

有澄はデスクに座り、パソコンで仕事をしていたらしく、手を止めて立ち上がる。

「ゆかりちゃんがお前に色々聞きたいんだって」

ドアの前に立ち尽くしていた私は日下部さんに背中を押されて、つまづきそうになった。

「っわ…!!」

「後々話すつもりだったのに、何で邪魔するの?」

デスクの前にあるソファーに偉そうに座る日下部さんから、向かい合わせだけれども離れた場所に座る有澄。

つまり、反対側の端と端に座る二人。

「秋葉さんもこちらへどうぞ。今、紅茶をお入れしますね」

「は、はい…。ありがとうございます…」

私はどちら側に座ろうか迷っていたが、社内では有澄は上司なので日下部さんの隣に座った。
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