糖度高めな秘密の密会はいかが?
有澄は"副社長"と呼ばれる事があまり好きではないらしく、ちょっと怒らせてしまった。

彩羽コーポレーションは家族経営といっても、社長と副社長が身内なだけで他の役員は違う。

社長の決めた辞令に従っただけの有澄は、陰で若すぎるだの成り上がりだのと言う噂を囁かれている様なので精神的にもキツいのだと思う。

「有澄…温泉楽しみだね。露天風呂が海が見える絶景なんだって!部屋食初めてだから、どんな感じかな?」

暗雲が立ち込めて来たので話題を変えて、ゴールデンウィークに宿泊する温泉の話。

気づけば、あと何日かでゴールデンウィークになり指折り数えた方が早い。

「俺は客室の貸し切り風呂が一番楽しみなんだけど…。貸し切り風呂と部屋食なら、チェックアウトまでは外に出なくていいから、ずっとゆかりと一緒だね」

「うん、ずっと一緒だよ。湯船も何種類もあるんだって。日替わり風呂とか。早く行きたいね」

「いや、そうじゃなくて…。誰にも邪魔されずにゆかりを独占出来るって話」

「うん…、私も有澄を独占出来るね。家とはまた違うよね」

有澄は不機嫌そうに大きく溜息を1つ吐き、

「あーもぅ!ゆかりは鈍感だから…。仕事も家事もないから、ずっと抱き合っていられるねって話だったの。理解した?」

と言って私の方を上目遣いで見る。

「理解、したけど…。お風呂の中でするのは嫌い。のぼせるから…」

「なるべく気をつける」

有澄は最近、何かに焦っている様な、もしくは何かに怯えている様な気がする。

とにかく、独占欲が半端ない。

眠る時も必ず一緒の時間だし、私の方が遅ければ駅までお迎えに来てくれる。
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