糖度高めな秘密の密会はいかが?
「はい、紅茶。明日からGWだから皆は残業しないで帰ってしまったし…そう言えば、ゆかりちゃんと二人で残業って初めてね」

「ありがとうございます。いただきます。いつもは皆が居ましたからね。佐藤さん…お身体大丈夫ですか?急な残業に付き合わせてしまいごめんなさい…」

佐藤さんの入れてくれた紅茶を飲みながらの作業。

いつもなら佐藤さんも紅茶を飲むのに、妊娠してるから今日は暖かいココアだった。

「私、あんまりつわりが酷くないみたいで、気持ち悪くてダルいんだけど、体調はそんなに悪くないの。体質かな?…それに明日からお休みだからちょっと位は大丈夫よ」

にこやかに笑う陰で、目に涙を沢山溜めているのが分かった。

涙をこぼさないように必死で耐えている佐藤さんは、本当は仕事を辞めたくはないのだろう。

そんな姿を見ていたら、私はまた涙を流してしまった。

お互いがお互いの涙を見ない様に作業を進めて、しばしの沈黙を破る様に日下部さんと綾美が戻って来た。

「近くの画材屋で買って来たよ!あとおにぎり買って来た」

綾美は元気良く入って来て、私のデスクにコンビニのおにぎりの袋を置いた。

それとは裏腹に日下部さんの嫌味な一言。

「佐藤さんも飛んだ災難ですね」

「ううん、私が手伝いしたいのよ。綾美ちゃんの元気な声を聞けるのも、日下部君の嫌味を聞けるのも、ゆかりちゃんの隣で仕事するのも、もうすぐ終わりだと思うと…脱力感しかないの。妊娠中だから、余計に心細いのかな…」

佐藤さんの目から涙がこぼれて、手でぬぐう。

綾美もつられて涙を流す。

この後は3人で泣いてしまい、日下部さんは戸惑ってあたふたしていた。
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