糖度高めな秘密の密会はいかが?
泣きながらの作業は目が腫れぼったい感じになり、パソコンを見るのが辛かった。

佐藤さんと綾美を長い時間引き止めるのは刻なので、自宅で出来る作業だけ残して帰ることに決定。

帰り際、スマホが鳴ったと思ったら有澄からでウェルカムボードを持ち帰るなら相良さんが車で送って行くと言われたので迷わず佐藤さんを送り届けて!とお願いした。

・・・そんなこんなで相良さんの車の中で、綾美は一緒に乗らずに高橋さんと待ち合わせしてるからと行って駅に向かい、日下部さんはちゃっかり一緒に乗車。

佐藤さんを一番で送り届けた後、いつもの有澄の王子要素はどこに行ってしまったのか・・・険悪なムード。

「…で、何でゆかりの作ったボードが切り裂かれていた訳?」

「俺が知るか!こっちが聞きたい!」

佐藤さんが助手席に乗っていて、降りてからも私達は後部座席に3人で乗っていたので、真ん中に挟まれている私は気まづい。

相良さん、どこかに停車して下さい。

私は助手席に乗りたい!

「ゆかり、こっちおいで」

有澄に肩を組まれ、胸に倒れかかる姿勢になる。

「相良、先に降ろしてくれる?電車で帰った方がマシ!」

「それは、こっちのセリフだ」

私の身体が有澄に力強く確保されているので、逃げ道がない。

「ケンカするなら、皆降ろしますよ。私だって暇じゃないんですからね」と言う相良さんの呆れた声が運転席から聞こえた。

そんな声が聞こえたのか二人は無言になり、誰一人として話さない帰り道。

日下部さんが先に降りて、肩の荷が降りた感じがした。

私達も有澄の自宅前で降ろして貰い、ウェルカムボードを持って階段を登る。

「…待っててくれてありがとう」

鍵を開けている有澄の横で、小さな声で伝えた。
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