糖度高めな秘密の密会はいかが?
そんな話をした時に信号待ちで停車した。

「内緒にしないで俺の事、言ったらいいのに?」

右手でハンドルを持ち、左手で私の右頬を軽くつねり私を見つめる。

「それとも、ゆかりより年下だから信用されない?」

「違う、そうじゃない。でも…」

有澄の真剣な眼差しに思わず、目線を助手席側の窓にずらす。

両親に言ってしまったら最後、有澄と上手く行かなくなった時が怖い。

それにただでさえ結婚だの、孫だのと言われているのに・・・これからの有澄の将来もあるし、縛りつけたくない。

信号が青に変わり、左手は私の右頬から離れてハンドルを操作する手に戻った。

「さっき話した大学時代の彼女も、俺が社長の息子だからって近付いて来ただけ。あんまり女の子に免疫なくて、言われるがまま付き合って来たけど、お金がないって分かると自然消滅。さっきは格好悪くて言えなかったけど…。

ゆかりに素性を明かせなかったのは、会社の事もあったけど、社長の息子なのにお金がないって離れていったらどうしようって思ったから…」

運転しながら呟く横顔はどこか切なそうに見えた。

私はお金があるとかないとか関係なくて、有澄本人が好きなだけ。

逆に言えば、副社長という地位に戸惑ってしまっている。

「…有澄の事情は有澄にしか分からないと思うけど、彼女と別れて正解だよ。大学時代の有澄の事も何にも分からないから、ちょっと嫉妬してたけど…私は今を独り占めしてるから、それで良い事にする」

知らない分、沢山の思い出を作りたい。

けれども結婚となると…何だか踏み出せない。

したいけれど、怖い。

仕事の事とか、副社長の奥さんになる事とか、色々・・・・・・。
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